Grasse, Wed. July 25th - visiting a perfumery

*** translation in progress ***

7/25(水)- 小さな香水工場を訪問

午前中、グラース郊外にある小さな香水工場の見学。
香料を作る会社や売る会社、そして香水を売る会社などいろいろあるうち、
ここはまさに香水を作る会社なのです。
あらゆる香料を調合して、原液を作る。
それらは化粧品に加えられたり、そのままボトリングされて「香水」として売られたりもする。
まさしく調香師がブレーンとして大事な役割を果たす会社。

まずはラボ(実験室)見学。
調香師が作成したレシピ(フォーミュラとかスキームと呼ばれる)どおりに、
材料を調理するキッチンのようなところ。



隣にはできた料理の味を分析する「分析室」もあり、ガスクロマトグラフの機械が活躍する。


(ガスクロマトグラフ室)


(ただいま分析中。1時間半の間、オーブンの中の温度が少しずつ上がっていく仕組み。この機械は1980年代のもので、デジタル化したものは別に最近2004年に購入した。それでもこちらも現役。)




(香料)


(こちらは過去に作成した香水。左から年代順に並ぶ)

次は、「料理」を大量生産する工場部分を見て回ります。
よく車にガソリンを入れるのに用いられるような大型注入器で、
香水をドラム缶に詰めているところでした。
デパートに鎮座するシャネルの5番でさえも、
こういうふうにしてドラム缶詰めされるってことですよねぇ・・・



その隣には、到着したばかりの「食材」、つまり香料が詰まったドラム缶が並んでました。
この会社ではそれらをひとつひとつガスクロマトグラフにかけ、
品質をチェックしているそうです。
(この会社はとくに高品質な香水を売ることをウリにしている会社。)




天然香料はとくにワインのようなもので、当たり外れの年があるそうです。
毎日1缶は、送り返すものが出てくるとか。
中には天然香料50パーセント、残りはsolventだった紛い物も。
香料会社の中でも大企業になるほど、そういう雑なものを送ってくる確率が高いそうで。

そこから1ブロックほど歩くと、
「調理場」や「食品工場」の香り汚染を避けるように、
調香師の仕事場があります。
中に入ると空気がとてもクリーンな普通のオフィス。
そこで調香師は、頭の中で香水のレシピを練り、
コンピューターで数値を処理し、プリントアウトして、ラボに持参する。
香料の瓶やムエットが机上に散らばる以外は、一見普通のオフィスです。
ここの調香師のひとりは、ボディフェ氏の息子さん。
お父さん同様、元気なオーラの出ている、素敵な調香師でした。





調香師のお話を要約すると・・・


私たちは、クライアントの依頼(いわゆるブリーフ)をもとに、調香します。
その内容はいろいろですが、例えば
”森をひとりで颯爽と歩いているようなイメージの香水”
という詩的な依頼もあります。
しかし最近は、EUの規制が厳しくなったこともあり、
”肌用クリームのXXの基準をクリアしたもの”といったような
テクニカルな依頼内容がほとんどです。
この場合、創造の可能性はかなり限られてしまいます。
できたものをクライアントに打診するにも、
「詩的な依頼」の場合は何度も作り直しがあるものですが、
「テクニカルの依頼」の場合は規制をクリアしてれば1回で済みます。

EUの規制は毎月のように数種類の香料を調香師のパレットから消します。
今の時代、どこどこの牛肉が危ないといったように、人々は何かしら恐れる時代で、
必要以上に香料が規制される流れにあります。
天然素材の香料はとくに、アレルギー誘発性の点で規制が厳しく、
価格と供給の安定性の問題もあって、
今後ももっと合成香料を使わざるを得ない状況になっていくでしょう。

規制というのはアレルギー性や毒性を考慮した上で敷かれるものですが、
これまでの天然香料などで特に問題はあったということはありませんよ。
使う量が限られていますので。


「合成香料がどんどん私たちの周囲を支配していく。」
調香師のこの言葉には重みがありました。

私が匂い文化の保存のための「匂いライブラリー」を作ることに興味を持ったのには、
じつはこういう背景を意識してのことです。

たとえば現実に、インドネシアのトイレとオランダのトイレとが、
同じ「レモン系合成香料」のフレッシュナーの香りがする、なんてことが起きています。

そして食品によく入っている香料のバニラ。
天然のものと合成のものを嗅いで「どちらがバニラですか」と聞かれたら、
多くの人は合成のものを選ぶでしょう。
小さい頃からそういうものを食べてきたらそうなってしまうのも当然です。
本物のバニラはちょっと薬っぽいトップノートが含まれてるのもあり、
合成の方がより私たちの好むバニラに近く作られているのです。

これまで人間が本能的に使って来た嗅覚に、
いろんなバイアスがかけられつつある時代。
これからどうなるのでしょう。

天然香料を嗅いでいた先週と、合成香料を嗅いでいる今週の体の疲れ方は、
明らかに違います。
先週は天然香料からあるていどエネルギーをもらっていたけど、今週は逆。
鼻が「もういいよ、あまり深く嗅がないで」といっているのです。
未来はこんなのにもっともっと囲まれる世界・・・ということですよね。


(グラースで昔、盛んにおこなわれていたアンフルラージュの写真。女性の仕事だった。)

昼食を近くのCabrisのレストランでとった後、帰って来てからは、
合成香料を使ったアコードに取り組みます。

わたしはカンがいいので、最初から近い値を当てていくのですが、
そこから先、実際の「理想値」とされるものになかなか当たりません。
「えー、もういいじゃん、これくらいで」と思ってしまうのです。
ある程度近くなって来たら、「まあいいでしょう」と合格をくれるロレンスは優しいけど、
経験値のない2週間講座の私たちにとっては、これはちょっと無意味な作業な気もします。
ボディフェ氏の息子のように、頭の中で完全に香水が作れるのなら別ですが。

私などは、実際に香料を足していきながら、
その変化を鼻で経験することでアコードを学ぶということをしたいタイプです。
実際にその変化を嗅ぐのは好きだし得意だし。
もちろん、香料Aはだいたい10g入れれば十分だとか、あるていどの方程式があるので、
そういうことは先人の知恵として学ぶことは重要だと思いますが。



授業の後は、併設のプールで軽く泳いで(贅沢)、
B&Bに帰ってからはまた宴会。
ミシェルのお母さんがいらしていたのです。
70歳を超えているというのに、身のこなしの美しい生粋のパリジェンヌ。
タバコも、それ以外のものも、ずーっと吸い続けるお方。
もうひとりのお客さんは、フランス在住のスコットランド人。 
「世界でどこがいちばんculturalかというと、やっぱりフランスでしょうね」とか、
「将来は、水の戦争になる」とかいった、グローバルな話題。
お酒の席でこういうレベルで皆が話せるということ自体、
やはりフランスは文化度が高いといえます。



今回、フランス人家族の家に滞在したことで、
耳がフランス語にかなり慣れました。
そう思えるだけ、オランダ語よりはマスターしやすい言語ということか。
これからフランス語、がんばろう(宣言)

Comments

Popular Posts